歯科医院で治療を受けるとき、どうしても費用のことは気になってしまうものですよね。
わかっているつもりでいても、なかなか正確なことがわからないのも、治療費ではないでしょうか。
その原因として、治療を受けるとき都度、診療明細書を受け取っているのですが、この診療明細書がわかりづらかったり、診療報酬のことがわからなかったりします。
目次
診療報酬とは何?
日本においては、すべての国民の方々が公的医療保険制度の加入を義務付けられています。
このことによって、歯科治療でかかる費用の一部は国などの機関が負担してくれているのです。
ですから、患者様はいつも保険証を提示して、残りの一部を負担するだけで必要となる治療を受けることが可能なのです。
患者様の自己負担分以外の費用は、医療保険者によって医療機関に支払いがされています。
歯科医院などの医療機関で、治療を受けたり、薬を薬局で処方してもらったとき、かかる費用のことが、「医療費」です。
そして、「診療報酬」とは、医療行為の対価として医療機関に支払われるもののことを言います。
たとえば、本屋さんで本を買うときには、代金と引き換えに本を受け取ることができ、カフェでは提供されるコーヒーにお金を支払います。
一方、歯科医院などでは、病院が提供する医療行為に対して、患者様の自己負担分と、患者様が加入している保険組合によって診療報酬という対価で支払いをしているのです。
全体の1~3割程度は患者様側で支払いし、残った7割に対しては、みなさんが加入している国民健康保険や、健康保険組合、全国健康保険協会などで支払ってくれているのです。
国が取り決めた価格表にもとづいて決定した医療費のことも「診療報酬」と言います。
診療報酬の意味合いは、医療行為や医薬品などの対価、また、医療に関しての価格表や、制度自体を指し、ややわかりづらい面もあるのかもしれません。

診療報酬は、医師の収入なの?
「報酬」という言い方も、なんだかわかりづらい感じですね。
本を買うとき、報酬なんて言い方はしませんし…。
また、診療報酬は「報酬」という言い方をしているから、それが全部医師の収入になると思っている方々もいるのかもしれません。
実際問題、診療報酬は、医療機関に対して支払われるものです。
そして、医療機関ではいろいろな経費の負担があります。
医薬品や、医療材料の購入費、また、医療機器や機材に係る費用、さらに施設維持・管理費用、人件費などがかかり、そのようなものは主として診療報酬から賄われているのです。
人件費について言えば、歯医者だけでなく、歯科衛生士さんや、その他様々な人たちが病院で働いているため、すべて職種への給与などに必要とされる費用です。
診療報酬の点数は診療行為ごと厚生労働大臣が細かく決定している
日本において、診療行為のひとつひとつに厚生労働大臣が取り決めた点数が決定され、それら点数を足し算して計算した額が、実際に診療にかかる医療費となります。
その中で、自己負担分を患者様側からいただき、残りは、加入している医療保険者から医療機関に支払いがされます。
患者様が受けた治療に対しての料金は、その治療行為ごとに決められた点数をもとにして「1点は10円」として計算がされています。
初診料が281点とあり、これは何?と思う方々がいるでしょうけど、それは単純に2810円のことです。
決して難しい問題ではありません。
そして、この点数「1点=10円」自体は、全国津々浦々どこでも同じです。
点数はどうやって決定されているの?
また、この点数は、どのようにして決定されていくのでしょうか。
それは、医療の進歩具合や、日本の経済状況を判断して、 通常であれば二年に一回の見直しがされています。
このことを、一般的に診療報酬改定と言います。
年末に、政府によって国の予算編成が行われるときには、診療報酬全体の改定率を決め、それをもとにして、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会に意見を求めています。
中央社会保険医療協議会は、支払側委員(保険者・患者・事業主の代表…)、診療側委員(医師の代表…)、公益委員(学識経験者…)で構成され、日本歯科医師会でも診療側委員として議論には参加をしています。
中央社会保険医療協議会では、前回改定の影響を検証するなど議論を重ね、その上で厚生労働大臣からの諮問に対し、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会、医療部会で決定された改定の基本方針に則り、それぞれ診療行為に対しての点数の見直し内容の提案を行っていきます。
保険診療の場合、みなさんが負担する歯科医院での治療費は全体の1~3割程度なのですが、もしも、自身で負担する額が急激に増加したら一体どうなってしまうのでしょう。
中には治療費を払えなくなってしまう可能性も出てくるため、もう歯科医院へは行かない…という人たちも出てきてしまうことでしょう。
健康な歯を維持することができなくなり、人たちの寿命も短くなってしまう可能性が充分にあります。
なかなか目にはすぐに見えないことですが、診療報酬制度が適正に運用されていることはとても大事なことであり、それらによってみなさんの健康がしっかり守られているのです。
歯科医院で自費診療を受けることとは
歯科医院で治療を受けた場合、「保険診療」になる場合と、「自費診療」になる場合があります。
自費診療での支払いの方が、治療費が高くなることは大方の方々が理解していることでしょう。
保険診療よりも自由診療の方が治療費の額が高いのは、そもそも、診療報酬の点数単価を自由診療の方が高めに設定することができるからです。
たとえば、手術料、麻酔料、検査料で診療報酬点数が6万点だったとします。
健康保険を使用すれば、この場合、1点あたり10円であるため、60万円という治療費で済ますことができます。
しかし、自費診療で治療を受けるとなれば、1点あたりいくらにするかは、歯科医院の裁量で決めることができます。
ですから、もしも「1点=20円」としてしまった場合、それだけで120万円の額にもなってしまうことになります。
かつ自費診療であれば、この120万円の額を全部みなさん自身で支払う必要が出てきてしまうのです。
歯科医院によって治療費に違いがある?
歯科医院の治療は、保険適用なのか、自費診療なのかで大きく事情は変わると言っていいでしょう。
保険適用の治療の場合、どこの歯科医院へ行こうが、違いは基本的に存在しません。
しかし、自費診療に関して言えば、自由に価格を決めることができるため、それぞれ歯科医院で治療費の差があり、大きく開くこともあります。
特に、インプラントあたりの治療では、それぞれ歯科医院が導入しているメーカーによって大きな価格の違いが出てきてしまうことがあります。
また、最近は、予防治療と向き合う方々も増えています。
この予防歯科においても、保険診療で行うことができる歯石除去以外に、自費診療となるクリーニングがあります。
そこでは、保険診療では使用することができない薬剤を使ってプラークを除去し、健康な歯と口腔内を維持することができます。
このクリーニングも自費診療であるため、まずは、受ける前にはどの程度の費用負担になるのか確認が必要です。
自費診療だからと言って、避けるべき問題でもありません。
自費治療は、自己負担がどうしても大きくなってしまうのですが、最低レベルの機能を補うための保険診療とは意味合いが違い、機能面や美しさ、よりベストなお口の環境を求めている方々にはおすすめしたい方法なのですから。
ただし、保険治療と違い、やはり支払い額は高めです。
想定外の高額請求をされてどうしていいかわからなくなってしまった……ということがないように、公式サイトなどを確認して、自費治療の料金が明確に掲載されてある歯医者を選ぶようにすると安心です。
当院でも、患者様に不安が起こらないように、費用のことはできる限りわかりやすくお伝えすることを心がけています。
