カルシウムを多く摂取すると、歯が強くなるという話しを聞くことがあるのではないでしょうか。
お母さんも、子供さんの歯がいつまでも健康でいられるように、牛乳をたくさん飲ませたりした経験があるかもしれません。
実際問題、カルシウムは歯に対してどのような影響をもたらすのでしょうか。
今回は、気になるカルシウムと歯の関係について解説します。
目次
カルシウムを多く摂取すると歯は強くなる?
実際に、カルシウムは、歯の原料となるものであり、歯が作られていくうえで、大事な栄養素なのです。
そうだとすれば、カルシウムをたくさん摂取すれば、健康な歯を維持し続けることができるのでしょうか。
カルシウムは歯を強くする要素はあるのですが、カルシウムを摂取すれば、誰でも絶対に歯が強くなるとまではいうことができません。
では、歯を強くするためには一体どうすればいいのか…。
生涯健康な歯を維持するために、ぜひ、正しい理解が必要です。

カルシウムは歯にどのような効果をもたらすのか
カルシウムは、歯に対して様々ないい効果をもたらしてくれます。
カルシウムが、歯にとって一番大きな影響をもたらす時期は、乳歯や、永久歯の歯の芽(歯胚)が誕生し、歯として歯ぐきの中で完成するまでの間です。
子供さんの歯が生えるのは、おおよそ生後6ヵ月あたりですが、乳歯の歯胚の場合、妊娠7週頃からできはじめ、永久歯は14週あたりには作られはじめています。
お母さんが妊娠している4~6ヶ月の間には、カルシウムの成分が歯へ沈着、石灰化しはじめ、硬くなっていきます。
永久歯の場合は、出生した頃から3歳頃あたりです。
歯の強さを決定付ける要素について言えば、この歯の「石灰化」が大事なポイントです。
ですから、お母さんが、妊娠しているときには、カルシウム摂取に留意する必要があり、さらに、出生した後に子供さんがどのような食べ物を食べるのかということも注意しなければなりません。
この時期を意識して、積極的にカルシウムが含まれている食事をとることによって、強い歯を作るためカルシウムのパワーを最大限に活かすことができるでしょう。
それ以外の人たちの場合
そうでない人たちの場合には、歯が作られる期間のような劇的な効果はカルシウムに得られる訳ではありません。
ただし、そうはいうものの、歯の再石灰化の作用に、カルシウムや、リンがとても大事な役割を果たしているのも事実です。
みなさんが日々、食事をとれば、むし歯菌の影響によって口の中が酸性寄りになり、歯の表面からカルシウムや、リンが溶け出してしまうことになります。
それからは、唾液のパワーによって、通常でしたら食事した後おおよそ40分程で酸は中和され、溶け出したカルシウムやリンはもとのメカニズムに修復されていきます。
このような働きが「再石灰化」です。
しかし、カルシウムやリンが不足している状態であれば、再石灰化がスムーズに行われず、むし歯のリスクを高める要因となってしまいます。
そのようなことがあるため、大人になってからも、みなさんはカルシウムの摂取に気をとめる必要があります。

歯を健康に維持するのはカルシウムだけではない
歯の健康を維持するために、カルシウムは大事な要素です。
しかし、歯を健康にするのは、カルシウムだけでなく、既に登場したリンもです。
カルシウムは、牛乳や、チーズ、大豆、小魚、桜エビなどに含まれています。
そのようなものを意識して多く摂取するようにしましょう。
また、リンがどのような食べ物に含まれているのかは、あまり馴染みがないのかもしれませんが、リンは、豚肉や、牛肉、卵、乳製品などに含まれています。
リンも、健康な歯のために大事な要素です。
さらに、ビタミンDや、マグネシウムは、カルシウムの吸収率を高める効果を期待することができます。
マグネシウムは、魚介類や、海藻類、納豆、玄米などに含まれています。
ビタミンDは、干しシイタケ、鮭、サンマ、イワシなどの食べ物です。
タンパク質は、歯の土台を作り、カルシウムの吸収をスムーズにします。
魚や、卵、肉、乳製品、大豆などに含まれています。
ビタミンAは、歯の表面のエナメル質を強化するために大切な成分です。
ビタミンAは、かぼちゃやレバー、人参や卵などに含まれています。
ビタミンCは歯の象牙質を作り、強くするために大事な成分です。
ブロッコリーや小松菜、ピーマンや苺などに含まれています。
あまりカルシウムばかりを意識していると、栄養が偏ってしまうこともあるため、注意しなければなりません。
歯の常識に嘘は存在している…?
みなさんが当たり前に常識だと思っているものの中にも、嘘(間違い)は存在しているかもしれません。
そのようなこともちょっとだけ確認しておきましょう。
おなかの赤ちゃんがお母さんの歯からカルシウムを奪うって本当?
おなかの赤ちゃんがお母さんの歯からカルシウムを奪うという話しをよく聞くことがあるのですが、それは、本当なのでしょうか。
結構、そんな認識をしているお母さんも多いのではないでしょうか。
昔から、子どもさんが一人誕生すれば、一本の歯を失ってしまうとか、お母さんの歯のカルシウムは、全部子どもに取られるとか言われることがあります。
ただし、実際のところは、おなかの赤ちゃんの成長のためにお母さんの歯のカルシウムが使われることはないことがわかっています。
ただし、妊娠することによって、むし歯や歯周病になるリスクが高まるというのは、事実であるため注意が必要です。
妊娠によって女性ホルモンが増加し、歯ぐきの炎症が起こりやすく、歯周病菌が増殖しやすくなる。
つわりが起こり、容易に歯磨きすることが困難だから。
妊娠して、食べ物の好みや、食習慣が変化し、むし歯の原因となるミュータンス菌や歯周病菌が増加してしまう…。
そのような理由をあげることができます。
赤ちゃんのむし歯対策は赤ちゃんの歯が生えてからすればOK?
赤ちゃんは歯が生えていないからむし歯対策は必要ない、と考えるのは間違いです。
赤ちゃんに歯がなくても、ミュータンス菌は口の中に定着してしまうことになりますし、2才前にミュータンス菌に感染すれば、その後、むし歯が重度化しやすくなります。
歯が生える前から感染症対策にも向き合い、子供さんが2才になるまではミュータンス菌に感染させない意識が大事です。
そのためにも大事なのは、やっぱりお母さんが妊娠している最中からしっかり口腔ケアを行うことですね。
当院で、おすすめしたいのは、キシリトールです。
お母さんは、キシリトールを摂取することで、口内のミュータンス菌が減少させることができ、歯垢のもととなるネバネバを発生しづらくすることができます。
結果、赤ちゃんの歯の表面にミュータンス菌が定着するのを防ぐことにもつなげることができます。

カルシウムをたくさん摂取すれば背が伸びる?
カルシウムをたくさん摂ると身長が伸びると思っている方々もいることでしょう。
ですから、頑張ってお母さんは、子供さんに牛乳を飲めと…。
しかし、残念ながら、カルシウムと、子供さんが成長する密接な関係を示す有望なデータというものは存在している訳ではありません。
カルシウムには、骨を強くする効果は期待することができるのですが、成長を促進する効果は期待できないということが「日本小児内分泌学会」の見解でも公開されています。
子供さんが身長を伸ばすためには、栄養を摂取することや、運動すること、快適な睡眠の方がもっと大事です。
ですから、運動をすることで筋肉をしっかりほぐし、「主食」、「主菜」、「副菜」が揃っている栄養のバランスがとれた食事を摂るようにしましょう。
そして、カルシウムも不足しないように、日ごろの食事を意識してください。
プラスして、睡眠をしっかりとって成長ホルモンを分泌させることも、成長のために大事なことです。
カルシウムが不足すると骨が弱くなる?
カルシウムが不足してしまえば、骨がもろくなるというのは本当なのでしょうか。
こちらの答えは、本当のことです。
こちらは、大腿骨骨折頻度と、カルシウムの摂取する量に相関関係があるというデータが報告されています。
カルシウムは、不足しているからといって、即、欠乏症などの症状が出るというわけではなく、まずは、骨や歯から必要であるカルシウムが身体に補われていきます。
ですから、カルシウムが不足し、骨はもろくなってしまいます。
ちなみに、骨の強さ、骨密度あたりが増加するのは思春期あたりまでと言われています。
ですから、育児しているお母さんは、子供さんが小さいころカルシウムが不足してしまわないように注意が必要です。
また、大人になってからはなかなか増やすことは難しいとしても、減らさないことは可能だと言われています。
大人になったら、今度は、現状ある骨を維持することを目的としましょう。
また、骨密度を増やす、維持するためにカルシウムだけあればOKという訳ではありません。
骨というものは、負荷がかかるほど骨を作る細胞が活発になるため、適度な運動も必要なのです。
プラスして、カルシウムの吸収を高めるビタミンD、骨の形成に関わるビタミンKもあわせて摂取が必要です。
健康な歯であるため、正しい知識をもつことはとても大事なことです。
わからないことがあれば、積極的に当院にご相談ください。